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労働問題

 

 

 

 

 

 

1 労働審判

労働事件の場合、通常の訴訟のほかに、労働審判という制度もあります。

 

(1)審理の流れ

原則3回で、1回目までに殆どの主張・立証をしなくてはならないので、申し立てた方はまだしも、特に申し立てられた相手方(通常は会社側)にとっては、そのときの状況にかかわらず、第1回期日までにほぼ全ての主張を書面で作成し、証拠を整えなくてはならないので、大変な面があります。

異議が出れば、通常訴訟に移行します。

和解になることが多く、第1回期日で、関係者に対して審判官が質問をした後、和解の意思や金額などを、各当事者に打診されます。

 

(2)第1回期日までの準備が重要

前述のとおり、第1回期日までの準備が大きなウェイトを占めており、準備不足で臨んだ場合、審判官の心証や印象が悪くなってしまうことも少なくありません。

したがって、申立があれば、速やかに準備に入る必要があるため、1日でも早く弁護士に相談すべきです。

 


 

 

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2 パワハラ

(1)社会問題化

近年、パワハラをめぐる問題が多くなってきています。

これは、「パワハラ」というキーワードができるなど、社会で問題であるという認識が広まったことにより、その訴えが多くなったものと思われます。

 

(2)パワハラの類型

どのような場合に、パワハラというになるかに関し、厚生労働省は、平成24年1月30日、以下の6つに類型化した報告をしました。

身体的な攻撃(暴行・傷害)
精神的な攻撃(脅迫・暴言等)
人間関係からの切り離し
過大な要求(業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制、仕事の妨害)
過小な要求(業務上の合理性なく、能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないこと)
個の侵害(私的なことに過度に立ち入ること)

 

①や②が、どんなことを意味するかはわかりやすいと思います。

③は、ひとりだけ個室にしたり、無視したり、仲間はずれにすることなどを意味します。

④は、バブル期によくあった過大なノルマなどが典型例で、これがパワハラにあたることはイメージしやすいと思うのですが、逆に⑤のように過小な要求もまたパワハラになるのです。これは、いわゆる「窓際」「左遷」といえばイメージしやすいかもしれませんが、能力があるのにいつまでも簡易な仕事しかさせないとか、閑職にとどめることで自主退社を期待するような場合などがこれにあたります。

また、⑥のようなプライバシーへの過度な立ち入りもパワハラの一類型とされています。

 

(3)パワハラ問題の深刻さ

パワハラの結果、①以外の類型の場合、多くは身体的な疾患ではなく、精神疾患として、会社に訴えがなされます。

この場合、会社の抱える問題としては、(ア)本当に罹患しているのかわかりづらかったり、(イ)パワハラによって病気になったのか、あるいは家庭など他の要因によって罹患したのかわかりづらかったりするということがあります。(ウ)また、安易に、病気でないのではないかとか、会社の責任ではないということが、二次被害として責任を増大させることにもなりかねません。さらには、(エ)パワハラではなく、私病にすぎないと判断できる場合でも、長く欠勤を継続する場合に解雇などの措置をとっていいのかという問題があります(この場合、休職制度の活用が考えられます)。

 

他方、パワハラの被害を受けた従業員の方が抱える問題としては、上の裏返しで、(ア)(イ)本当に罹患しているのか、パワハラによるものなのか、の証明の問題があり、また、(ウ)会社に適切な対応をとってもらえなかったり、挙げ句の果てに(エ)解雇などの処分をされしまうこともあります。

 

(4)対策

以上のような問題に対し、会社としては、このような問題が起きないように研修会などを行って従業員への啓蒙をしたり、報告システムなど管理体制を構築するなどの事前対策を行うべきです。また、残念ながら、このような事態が発生した場合に、迅速かつ適切な対応をしなくてはなりません。

他方、パワハラの被害を受けた従業員の方としては、勇気をもって、まずは周りに相談することをお勧めします。

 

当事務所では、これらの法律相談について、会社側、従業員側のいずれも、随時承っております。

また、会社側としての場合に、問題が起きた場合の対処はもちろん、事前対策のご相談、講義・講演なども承っております。

お気軽にご相談ください。

 


 

(5)パワハラの判例

ア 事案

Xは、損保会社に総合職として入社し勤続約30年、サービスセンターにおけるユニット内で3番目の席次であった。Xの年収は980万円であった。

Y1はXが所属しているサービスセンターの所長で、Y2は、Xが所属するユニットの「ユニットリーダー」であった。

Xはかねてより仕事の処理状況は芳しくなかった。

そこで、Y2が、Xを含むユニット所属従業員全員と上司のY1に対し、「Xもっと出力を」と題し、Xの仕事の成果が出ていないことにつき指摘するメールを送信した。

Y1は上記メールをみて、Xへの指導を行うと共に、Y2のメールの内容を支持することを表明する必要があると考え、下記の内容のメールを同日、XやY2を含むXと同じユニット所属従業員に送信した。

表題 :「『Xもっと出力を』について返信します」

1、意欲がない、やる気がないなら、会社を辞めるべきだと思います。当センターにとっても損失そのものです。あなたの給料で、業務職が何人雇えると思いますか。あなたの仕事なら、業務職でも数倍の業績を挙げますよ。本日現在、搭傷10件処理。Cさん(途中入社、2年目)は17件。業務審査といい、これ以上、当センターに迷惑を掛けないでください。

2、未だに始末書と「○○病院」出向の報告がありませんが、業務命令を無視したり、業務時間中に勝手に業務から離れるとどういうことになるか承知していますね。

3、本日、半休を取ることを何故ユニット全員に事前に伝えないのですか。必ず伝えるように言ったはずです。我々の仕事はチームで回っているんですよ。

 

Xは、メールは上司が部下を指導したり叱咤激励するというものではなく部下の人格を傷つけるもので、Xの名誉感情を害するいわゆるパワーハラスメントとして違法であるとして、提訴。

 

イ 平成16年12月1日東京地裁(1審)の判断

本件メールは、Xの私的な生活に干渉するものでなく、業務の遂行状態についての評価を内容とする。従って、業務上の指導の範囲を逸脱したか否かの検討が必要。

メールの表現は、相当に過激である。しかも、メールの場合はニュアンスが介在しないので、直接的な伝わり方をする。ただ、Y1はXの業務実績が上がらない原因を熱意の問題と見てこの表現をとったのであり一時的な叱責の範囲と理解できる。

叱責としては相当強度のものであるが、この表現だけから直ちに業務指導の範囲を逸脱した違法とするのは無理がある。 メールに至った経緯(Xの評価は下降して、指導の成果が顕れないことから、Y2がメールを送り、同日、Y1がメールを送った)に照らせば、Y1がXに対し、その業務成績の低下防止のため奮起を促す目的でメールを送信したと考えられる。また、メールがX以外のユニット所属の全従業員に送信されている点については業務指導を行う上司の裁量の範囲内である。

Y1のメールは、業務指導の一環として行われたもので、内容もXの業務に関するものにとどまっており、メールの表現が強いものとなっているもののいまだXの人格権を傷つけるものとまで認めることは出来ない。

 

ウ 平成17年4月20日東京高裁(控訴審)の判断

Y1がメールを送ったのは、Xに対しその地位に見合った処理件数に達するよう叱咤督促する趣旨であることが伺えないわけではなく、その目的は是認出来る。
しかし、メール中には「やる気がないなら、会社を辞めるべきだと思います。当センターにとっても会社にとっても損失そのものです」という退職勧告とも会社にとって不必要な人間とも受け取られるおそれのある表現が盛り込まれており、これがXのみならずユニット全員に送信されている。

メールの表現は、「あなたの給料で業務職が何人雇えると思いますか。あなたの仕事なら業務職でも数倍の実績を挙げますよ。これ以上、センターに迷惑をかけないで下さい」という、それ自体は正鵠を得ている面がないではないにしても人の気持ちを逆撫でする侮辱的言辞と受け取られても仕方のない記載などの他の部分ともあいまって、Xの名誉感情をいたずらに毀損するものであることは明らかである。

送信目的が正当であったとしてもその表現において許容限度を超え、著しく相当性を欠くものであって控訴人に対する不法行為を構成するとして、5万円の慰謝料支払いを命じた。

 

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3 セクハラ

(1)類型

セクハラの類型としては、以下の類型があげられます。

ア 対価型セクハラ (例:上司が部下に対して性的な関係の要求を断られたため、解雇する。)
イ 環境型セクハラ (例:上司が部下の胸等を度々触るため労働者が苦痛を感じて就業意欲が低下する。)

 

(2)違法性判断基準

違法性の判断基準としては、以下のようになります。

被害者の主観的な感情のみを基準に判断されるものではなく、両当事者の職務上の地位・関係・行為の場所・時間・態様、被害者の対応等の諸般の事情を考慮して行為が社会通念上許容される限度を超え、あるいは社会的相当性を超えると判断されるときに不法行為が成立する。
優越的地位を背景にした場合は違法性が肯定されやすい。特に、優越的地位を背景としたセクハラでは、被害者側に行為を容認するような言動や行動があったとしても違法性が肯定される場合がある。

 

(3)セクハラの具体例

(2)のような理論的なことでは、結局、どんなことがセクハラにあたるのか、わかりにく面もあるかと思います。

そこで、例を示すと、以下のようなものがセクハラとなり得ます。

 

ア 性的な内容の発言に関する事例

宿泊を伴う行事等の際、社員等を部屋に呼んで、性的な質問をする。
掃除を怠けていた女性社員等に対して「女の子のくせにきちんとしなさい。」と叱る。
泣いている、あるいは落ち込んでいる男子社員に対して「そんなことで泣いていると(落ち込んでいると)女々しいぞ。」と叱る。
スリーサイズなどを聞く。
容姿を話題にする。
性的な冗談を言ったり質問したりする。
性的なプライバシーに立ち入り過ぎる。
「彼氏いるのか。変なことするなよ。」と言う。

 

イ 性的な行動に関する事例

指導の際、必要がないのに肩や背中に触れ、異性の社員等に不快感を与える。
男女の性別によって、行動や役割分担を一方的に決めつける。
女子であることで、お茶くみや掃除をさせたり雑用を強要する。
異性の社員等に対してマッサージと称して身体を触る。
「マッサージしてやるよ。」と言う。
懇親会等で、カラオケやダンスを強要したり、拒否されると成績を下げたりなどする。
デートにしつこく誘う。
水着のカレンダーを貼る等、不快な環境で居心地を悪くする。
相手の体に不必要に触れる。
肩や髪に触る。
しつこく交際を迫る。
性的関係を迫る。
不要な電話をしたり、メールを送ったりする。
のぞきや盗撮をする。
わいせつ行為・淫行(痴漢、性交渉等の犯罪行為)をする。
本人に黙って写真を撮る。
集団宿泊等で、着替え中の部屋へ無断で入る。

 

ウ 二次被害

「あの人がそんなことするわけないよ。」と頭から否定する。
被害を訴えたところ、「それくらいのことで。」と逆に加害者扱いする。

 

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4 残業代

(1)管理監督者と残業代

平成20年1月28日、東京地裁で日本マクドナルド社の店長について、管理監督者(いわゆる管理職)にあたらないとして、2年間の未払い残業代の支払を命じる判決が出されました。

管理監督者にあたらなければ、残業手当は支給する必要があるわけですが、管理監督者にあたるかどうかの基準として、この判決を含めた様々な裁判例があり、それぞれ少しずつ違いはあるものの、概ね①人事権や営業方針の決定権、②出退勤の時間を自分で決められるか、③管理職にふさわしい賃金か、といったことを材料に決められます。そして、裁判所の判断は、決して「管理監督者」の範囲を広く考えてはいません。

 

(2)管理監督者の深夜割増賃金

そして、平成21年12月18日に、最高裁判所にて、別の事例について、判決がでました。それは、「管理監督者であっても、深夜割増賃金は支払わなくてはならない」というものです。

(1)で述べた裁判例では、残業手当は、管理監督者にあたらないときには支払わなくてはならいことを前提に、原告である労働者が管理監督者にあたるかどうかが争われていました。しかし、この最高裁判決は、管理監督者にあたる場合でも、深夜割増賃金は支払わなくてはならないとしたのです。

 

(3)残業手当

残業手当とは、時間外労働であって、25%以上の手当が必要です。また、深夜割増賃金とは、午後10時から午前5時までの労働で、25%以上の手当が必要というものです。深夜の時間帯に残業をすれば、50%以上ということになります。

 

それまでは、肩書きに課長・部長などがついていればいわゆる管理職にあたり、残業手当を支払わなくてもいいと考えている会社さんも、少なくなかったように思います。また、いわゆる管理職の人には、深夜割増賃金を支払う必要はないと考えられていたと思われます。

しかし、これらの判決を契機として、労働基準法上の管理監督者にあたらないのに残業代の支払いのない店長等からの残業代支払請求が増加する恐れがあります。本件に限らず、残業代問題は、経営者にとって深刻です。

企業としては、こうしたコスト増要因に関して、真剣に対策を講じることが必要です。

 

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5 給与の前借り

(1)給与の前借りを頼まれた場合応じる義務はあるか

労基法25条の場合を除き、義務はありません。

 

(2)労基法25条の場合

非常時(出産、結婚、病気、災害等)について、給料日前でも給料を払うように定めています。
ただし、この条文で定めているのは、既に行った労働に対して給料日前でも支払うように定めているのであって、これから行う予定の労働に対して給料を払うように求めているものではありません。

 

(3)応じた場合のリスク

労基法25条に該当しない場合は、会社から金銭を貸し付けたことになります。
この場合、貸し付けた金銭について、会社側から、後の給料と相殺することは労働基準法が認めていない(給料全額払いの原則・労基法24条)ため、回収が困難となるリスクは覚悟しなければなりません。

社員の側から任意に相殺し、簡易に弁済することは可能ですが、その場合には、使用者側から相殺をしたり、強要したのではないことを文書上、明らかにしておく必要があります。

 

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6 就業規則

常時10人以上の労働者を使用する使用者は、労基法89条に掲げる事項について就業規則を作成し、行政官庁(労基署)に届けなければなりません。

また、10人以上の労働者を使用する場合でなくても、労働者に、そのルールを知らせ、使用者が恣意的に運用しないようにするためだけでなく、使用者にとっても、懲戒をはじめ、就業規則があることにより、ルール作りができることになります。

判例では、就業規則による労働条件の決定をより確固たるものとし、契約締結時に就業規則の内容に明確に同意していない労働者や、その内容を知らされていない労働者であっても、就業規則の内容が合理的であれば、その内容が契約内容としての効力をもつとされています(最高裁判決昭和61年3月13日)。

 

就業規則の作成は、社労士さんだけでなく、弁護士の業務であり、当事務所でも、取り扱っております。

就業規則の作成をされていない事業者の方、就業規則はあるものの、変更などの必要性をお感じの方は、お気軽に当事務所にご相談ください。

 

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7 解雇

解雇に関する法律論などは、以下のとおりです。

ただし、当事務所としては、解雇を通告する場合、その「言い方」「伝え方」で、紛争になる可能性は変わってくると考えています。

例えば、解雇事由を知らせる必要がある反面、解雇事由の伝え方いかんによっては、延々と「悪口」「苦言」を言い続けることになりかねません。ただでさえ、ショックなことを通告されている従業員に対して、追い打ちをかけるように苦言を言い続けるということは避けた方がいいことも多いと思います。

どのように伝えるかを含め、ご相談にのり、アドバイスさせていただいております。

 


 

(1)普通解雇

解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とされます(18条の2、解雇権濫用の法理)。

労働契約や就業規則で解雇事由を明示されていれば、必ず解雇が認められるわけではありませんが、明示されていることにより、合理性が認められやすくなりますし、労働者としても、ルールが明確になるので、明示しておくべきといえます。

 

(2)整理解雇

いわゆるリストラとして整理解雇をする場合、以下の4要件をみたす必要があるとされています。

整理解雇のための業務上の必要性の存在
整理解雇回避のための努力義務の履行
合理的な人選基準の設定と公平な選定
労働組合ないし従業員との協議または説明の実施

 

(3)解雇制限(19条)

以下の場合には、解雇ができないとされています。

労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかり療養のために休業する期間及びその後30日間
産前産後の女性が第65条の規定によつて休業する期間(第2の3参照)及びその後30日間

 

ただし、

a 第81条の規定によつて打切補償を支払う場合

又は、

b 天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となった場合

においては、解雇がなし得ます。

 

(4)解雇予告(20条本文)

少なくとも30日前にその予告をしなければならず、②30日前に予告をしない使用者は、30日分以上の平均賃金(解雇予告手当)を支払わなければならないのが原則となります。
したがって、例えば、10日前に予告した場合は、20日分以上の解雇予告手当を支払わなくてはなりません。

 

(5)解雇予告手当を支給しなくてもいい場合(20条但書)

以下の場合には、解雇予告手当を支払わなくてもいいことになります。

天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となった場合
労働者の責に帰すべき事由に基づいて解雇する場合

ただし、所轄の監督署長の解雇予告外認定を受けなくてはなりません。

 

(6)試用期間と解雇予告手当(21条4号)

試用期間であっても、14日を超えて引き続き使用されている場合には解雇予告手当が必要となります。

 

(7)内定取消

採用内定を取り消すことが解約権留保の趣旨・目的に照らして客観的に合理的と認められ、社会通念上相当として是認することができる場合に限られる(最高裁判決昭和54年7月20日。最高裁判決昭和55年5月30日)とされています。

具体的には、

病気、けがなどにより正常な勤務ができなかった場合、
内定を出した当時には予測できなかった不況の深刻化で会社の人員計画を大幅に変更せざるを得ず、管理職にも辞めてもらわなければならない事態になった場合、
本人が内定時に申告していた経歴・学歴の重要な部分に詐称があった場合

などがあげられます。

 

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8 懲戒

(1)懲戒に関する原則

懲戒処分を行うには、以下のことが必要です。

懲戒事由が就業規則に明定されていること
規定が合理的であること
労働者に周知されていること
懲戒事由が存在すること

懲戒処分の相当性

当該懲戒が、当該懲戒に係る労働者の行為の性質及び態様その他の事情に照らして、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、当該懲戒は、無効とされます(労働契約法15条)。

職場規律の維持の上で必要かつ合理的な範囲内であること
労働者の非違行為が懲戒処分と間で必要かつ合理的である必要があり、また、プライバシーの侵害を伴うような措置(例:合理的な必要性のない所持品検査など)が前提とならないことが必要となります。
適正手続
本人への弁明機会付与は最低限必要で、その他、場合によっては、懲戒委員会の開催や労働組合等との協議などを要することもあり得ます。

 

(2)減給

ア 懲戒処分として減給を行うことは可能か

就業規則に定めがあれば可能です。

 

イ 懲戒処分として行える減給に制限はあるか

制限があります(労基法91条)。
減給については、1回の額が平均賃金の1日分の半額を超えてはならず、さらに、その減給の総額が一賃金支払期における賃金の総額の10分の1を超えてはなりません。

 

(3)無断欠勤

ア 罰金

「無断欠勤一回につき罰金○○円とする。」との定めについては、そもそも定めが無効とされています(労基法16条・賠償予定の禁止)。

ただし、前述(2)の範囲での減給は可能です。

 

イ 解雇

一般的に14日以上の無断欠勤があれば、解雇も有効とされています。

 

(4)懲戒事由

職務懈怠

無断欠勤、遅刻、早退、職場離脱、職務不良、業務命令違反など

 

職場規律違反
暴行、脅迫、セクハラ、業務妨害、横領、背任、収賄など

 

経歴詐称
労働力の評価を誤らせ、労使の信頼関係や賃金体系・人事管理を混乱させる危険があることから具体的な実害の発生を問わず企業秩序違反となり、懲戒解雇事由になるとした判例も多いです(最高裁判決平成3年9月19日)。

 

社内政治活動・組合活動
施設管理を妨げ、従業員間の対立をもたらす企業秩序を乱すおそれのある場合。
具体的には、①態様(平穏か否か)、②経緯、③目的(会社攻撃目的か、市民活動目的か等)、④内容(誹謗中傷の類か否か、内容が真正か否か等)などを総合的に判断します。

 

社外での犯罪行為
当該行為の性質・情状、会社の事業の種類・規模、労働者の地位等を総合して、会社の社会的評価に及ぼす悪影響が相当重大であると客観的に評価される場合に限られます(最高裁判決昭和49年3月15日)。

 

社外における会社批判・告発行為
公益通報者保護法による場合は懲戒事由とならない。
そうでない場合、ほぼ真実と合致し、または信じるにつき相当の理由がある場合は、懲戒事由とならない。

 

企業情報の漏洩

 

兼業・競業行為
企業に現実に損害を与えたり、企業の信用を現実に低下させるなどの場合。

 

   

(5)処分の種類

始末書
不提出を理由に処分することはできません。

 

戒告

 

減給
1回について一日の平均賃金の半分、総額について一賃金支払期における賃金総額の10分の1を超えることはできません(91条)。
ただし、この10分の1を超える部分を次期に延ばすことは認められています。
また、賠償予定は禁止されています(16条)。

 

出勤停止
通常給与が支給されず、勤続年数にも通算されません。
相当性には厳しい判断がなされ、一般的にはせいぜい1週間程度が妥当か、とされています。

 

自宅待機
通常給与が支給される自宅待機の場合は、出勤に停止に比し認められやすいのですが、それでも業務上に必要性があり、不当に長期にわたらないことが必要です。

 

降格

 

諭旨退職
退職願・辞表の提出を勧告し、これに従って退職することにより、通常、解雇の形をとらず、退職金などの支払いをするものをいいます。

 

懲戒解雇
解雇しなくてはならないといえるだけの重大な義務違反、業務阻害や職務規律上の実害がある場合に認められます。

 

 

 

 

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